「満員電車には乗らない」と決めた

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雨が窓に激しくぶつかる音を聴きながら、照明を落とした部屋のど真ん中でパソコンに向かっている。

車のタイヤが水溜まりを掻き分ける。それがあまりにもやさしい音で、去年の2月に免許合宿で「雨が降っている時も歩行者にしっかり配慮すること」と教えられたことを思い出した。

この天気も明日の朝までだという。世のサラリーマンたちは今、どんな思いを抱えているのだろう。

 

 

 

雨の日の満員電車ほど辛いものはない、と私は思う。それに遅延も加わればなおさらだ。

 

ドアが開くと同時に一斉に押し出される人の波、それと共にホームに流れ込んでくるもわっとした生暖かい風。ガラッと空いた電車内に乗り込むも、先ほどよりも湿度が高くぬるりと重い空気に、胃の奥が悲鳴を上げる。

電車のベルが鳴っているにも関わらず無理に入り込んでくる大人たち、その勢いで歪む身体、知らないだれかの温かい背中、動かせない手の位置、そこら中に漂うあまったるい香水のにおい。

 

まだ、夏じゃないだけ良い。夏の、雨が降っている日の満員電車はもっと酷いからだ。それに比べれば、まだ良い。あの地獄を味わうまでには8、9ヶ月ある。その時が来るまで、地獄よりはいくらかましな満員電車ライフを満喫しよう。

 

 

 

と思ってそこで私は、違う、そうじゃない。と気が付いた。

 

東京という大都会に住んでいる限り、満員電車を避けられないことは、上京してまだ2年も経っていない私にだってわかる。

夏じゃないだけ良い、夏に比べればまだ良い、夏のそれに比べたらいくらかましな満員電車ライフを楽しもう。そう思うしかない。それが死ぬほど無理なら、満員電車という概念すらない地元に帰るか、夏がない国に移住するか、どちらかを選ぶべきだ。

 

 

考えてみれば、ここ最近私は「〇〇よりはまだ良い」と思いながら生きている気がする。

割と多動な人間なので何にでも手を出すし、こだわりが少ないからこそ「やりたくない」ことは決めているつもりだった。

しかし最近は、「このままでいいんだろうか」というもやもやとした気持ちを手放したいのに決断しきれず、最終的には「まあ、仕事があるだけいいだろう」とか「ちゃんと生きられているだけいいだろう」とか言って自分を甘やかしている。

 

 

本当にそれでいいのだろうか。

なにかと比べてまだいい、と思いながら過ごすこの現実が積み重なった時、私はどんな人間になっているのだろう。

 

夏じゃないんだから、夏に比べたら。いくらか良いんだから我慢しよう。

いくらか良いと言ったって、嫌なものは嫌なのだ。自分に言い訳しながら気持ちに蓋をして、いつかそれが溢れ出した時、自分が壊れてしまうことは目に見えているはずだ。

 

 

私は今年の初めに決めたはずだった、「満員電車に乗らない生活をしよう」と。

結局「仕事だから」「東京だから」と自分に言い聞かせてやり過ごしてきたけれど、本当にそれでいいのだろうか。

満員電車に乗らずに済む方法はいくつもあるのに、それを選ばずにこうして愚痴を言っているなんて、進んで嫌な気持ちを味わいに行っているみたいだ。

「乗らない」と自分の中で決めたのなら、それを軸に選択していけばいい。道はいくらか狭まっても、満員電車に乗らないことで心の平穏は保たれる。私はもっと、幸せになれる。

 

 

満員電車に限らず、「このままでいいんだろうか」「本当は嫌なのに」という気持ちを口から出すよりも先に、自分をもっと好きになれるような、毎日楽しいと思って生きられるような道へシフトすべきではないのか。「楽しいと思いながら生きたい」のなら、わくわくする選択を重ねていけばいい。

 

 

なにかに比べたらまだ良いとか、仕事だから仕方ないと言って本当の気持ちを見て見ぬふりするのではなくて、本当の気持ちに沿って選択をすればいいだけだ。

 

「継続は力なり」という言葉があるように、続けていくことは私たちの力になる。続けなければ知り得なかった魅力に気が付けたり、逆に「これは自分には合わないのだ」と自己理解を深めたりすることもできる。

私たちの親やおばあちゃん世代がよく口にする「石の上にも三年」という言葉も同様に、我慢すれば大成する、こともある。

 

ただ、継続は手段であって目的ではない。目的を達成するための手段のひとつでしかないと、私は思っている。

続けることが大事なのではなくて、目的を達成することが大事なのだ。自分に合わないと思うなら違う方法を探せばいいだけであって、生活に支障が出るほど嫌なことを無理に続ける必要はない。

 

 

 

だから私は今改めて、「満員電車には乗らない」と決める。

子供たちに「仕事は楽しいんだよ」って笑って言える大人になれるように、120%ではなくても、毎日幸せだと思える選択をしていく。

未来は日々の積み重ね。幸せな未来を夢見ているのなら幸せな日々を手に入れることから始めよう。

「〇〇よりはまだ良い」なんて言い訳せずに、もっと自分と向き合って、もっと自分を楽しませられる選択をしよう。